第120回 マニュアル化

  • レポート
  • 2015.06.30

「マニュアル的対応を受けた」
「マニュアルだらけで非人間的な職場だ」
「マニュアルに従っていれば良いと思っていて、一切工夫しようとしない」

マニュアルには批判も多いようです。

上記問題意識やそもそもマニュアルを作るのが面倒ということもあって、小さな職場ではそれをおろそかにすることも少なくありません。

実を言うと私達の事務所でも、もちろん最低限のサービスレベルやチェックポイントの基準は設けておりましたが、それ以外は、個人が誠意をもって対応する、という一見素晴らしい社内意識で乗り切ってきました。

ただ、やはり一定レベルのサービスの保証をするに当たり、どうでも良いところまで個人の判断に依存していると、限界がすぐに来ます。
「その他」の部分が多くなって、そこを受ける人間にも負荷がかかります。

最近、多くの経営者や読書家が薦める『ローマ人の物語』(塩野七生)を読んでいますが、これは冒頭で、小国の一つにしか過ぎなかったローマが強大化する過程を書いています。

特に初期のローマが強大化した理由は、他国に比べて(A)開放的であったこと、(B)個人に依存しない仕組みを備えていたこと、(C)インフラを重視したこと、にあったようです。
(勝手に私がまとめているだけなので、著者や他の方の整理と違うかもしれません)

(A)開放的であったこと
敗戦国の国民も平等にローマ市民に取り込み、元老院等の意思決定階層にまで取り込む道を選んだこと

(B)個人に依存しない仕組みを備えていたこと
これは(A)と無関連ではありません。交代したり、新たに加わったりする人達がすぐに成果を出せるように、あらゆる事項をマニュアル化、システム化していました。
他国では、一定レベルよりも上の階層は交代しないし、その人たちの判断次第なので、そうしたものがあまり重要視されません。

(C)インフラを重視したこと
これも(A)と無関連ではありませんが、たとえばローマ人の作る道は、道幅が広く直線でした。
このような道は当然防御には不向きですが、そこをあえて。
他国へ攻め込むときだけでなく、誰もが使えるその道は、通商にも当然有効です。
まさに「すべての道はローマに通ず」の通りです。

(B)がマニュアルに当たります。

2015年の今、紀元前の人達に倣っているのも進歩がないかもしれませんが、その人達が何百年もかけて実践したことは、組織の維持発展のために必要なことを教えてくれるように思います。

私もかなり遅ればせながら参考にしていきたいと思います。

ちなみに『ローマ人の物語』
ローマ人には何の興味もなかったので避けてきましたが、読んでみて、なぜ多くの方が薦めるのかわかった気がします。
ためになるのもそうですが、意外に面白い。

またここでご紹介することもあるかもしれませんが、ぜひご一読を。

*********************** まとめ *****************************

マニュアル化は組織発展のために必要

*********************** あとがき ***************************

以前、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の前身である宇宙開発事業団(NASDA)に関連するお仕事をさせていただいたことがありました。
(NASDAは12年前に廃止されましたし、秘密に関する部分を含まないため、あえて実名で書いています。)

そこでは、SOP(Standard of Procedure。組織内の方々はソップと呼んでいました。)が細部にわたって整備されていました。
要はマニュアルというか手順書。

マニュアルや手順書は、このようにロケット打ち上げを成功させるための組織や製造業には必須のものになります。
(もちろん、マクドナルドのようなチェーンオペレーションにも)

ホワイトカラーの生産性云々の話がありますが、これ1つとっても、まだまだ改善の余地がありますね。

つまり、いかに中小企業といえども、今さら私のようなのんびりしたことを言っていては本来ダメなわけですが、遅かったとしても対応しないよりはましと考え、取り上げました。