第244回 心配無用

  • レポート
  • 2025.10.31

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アメリカではAIが知的労働を担うことで
大卒の就職難が深刻になっているようです。

26日、日経朝刊の見出し
「AI猛進の米国若者の働き口に異変」
「学位あっても就職難→ブルーカラー選ぶ」

本文には
「今回苦労しているのは高卒などの比較的
学歴の低い層ではなく、いつもは景気変動
の影響を受けにくい大卒であることに特徴
がある」

AIで奪われるのはエントリーレベルの知
的労働のようで、
「AIによる雇用喪失の初期段階を目撃し
ている可能性がある」とのこと。

そうかもしれません。

以前はプログラムが少しでも書ければ誰で
も良いと言って採用をしていたIT業界の
お客様が、今は、ディレクターレベルなら
ほしい(あとは要らない)、と言うように
なってきました。

私共のような会計事務所でも、まだ深刻で
はないのですが、日々その動きを実感して
います。

インターンや内定者段階の学生達にお願い
するような業務が徐々に、しかし確実に減
ってきているのです。

以前であれば、お客様の資料に通帳のコピ
ーが何枚かあったら、会計ソフトの使い方
の経験も兼ねて、
「相手科目は「仮払金」で良いから、残高
を合わせながら入力していきましょう」
などとやっていました。

入力しているうちに残高がズレる。
なぜかな、と場所を推定し、特定する。
修正する。

その過程で、会計ソフトの入力、入力済み
の帳票の検索、修正、再登録、再確認のよ
うなものを体験していきました。

間違えやすいポイントやエラーの発見の方
法もそこで理解。

では、今はそのような作業はどうなりつつ
あるのか。

OCRで、金額だけでなく、明細部分の記
載まで読み込ませる。
それを会計ソフトに登録可能な様式に自動
変換。
そしてアップロード。

担当者は、そのアップロード結果を見て科
目を割り当てたり、おかしなところを修正
する。
AIはそれを覚えていて、次回に活かす。

このようになってきています。

かつてOCRといえば、無用の長物でした。
認識率97%と言われても、100文字中3文字
も間違えられたら仕事になりません。

間違いも誤変換レベルではなく、形だけで
判断するので意味不明というか悪質。

しかしAIを用いた今のOCRは完璧、早い。

これにより、仕事をわかっている人が、A
Iに下働きをさせ、間違えていれば教えて
あげる。
AIはそれを覚えて次に活かす。

人間は、その成果物を元に、次の段階の仕
事を行う、ということになってきました。

厳格な指示でなくても、人間に対して行う
ような少々あいまいな指示を出しても受け
入れながら進めてくれます。

今では、プログラムを多少書ける人も
関数を定義したり、ルール通りにループを
回したりIF文を書いたりせず、話し言葉
で「●●してください」と書いています。

このような流れの中、私達の事務所の週報
(各自が毎週金曜提出)には、最新のAI
の利用体験があふれています。

一番有名なAIはChatGPTかもしれませんが、
ここで登場することはむしろ少なく、

・このAIにこれをさせたらうまくいった
・最初ダメだけど、こうしてあげたら使え
 た
・このAIに与える資料はこうした方が良
 い
等々。

ただし、これらを試して体験談を語ってい
るのは既に日常業務をこなせるレベルの人
たち。

その人たちと、いわゆる初期の修行段階に
ある人との間にあった緩やかな坂というも
のがなくなり、壁なのか崖なのか、段差が
できつつあるような気がしています。

日本は幸いにも少子化ですから、大学生の
売り手市場は依然として続いていてまだ大
丈夫そうです。

でもその先には今のアメリカと同じ「大学
は出たけれど、、、」の世界が起こるので
はないか。

自分はともかく、自分の子供世代のことが
心配になります。

お客様から、「多くの業界を見て、経営者
たちを知っていると思うのですが、子供に
は何をやらせるのが良いと思いますか。」
と聞かれることがあります。

これが、ますます難しくなってきました。

つい最近までは、英語とプログラミングが
できれば食いっぱぐれることはなさそうで
すね、と言っていました。

もちろん、できないよりできた方が良いの
ですが、そうも言ってられないような気が
しています。
単に中国語もできた方が良い、とかではな
く、もはや別次元の何か。

解の1つには、日経の記事にあるように、
頭脳労働から肉体労働に向けての回帰もあ
るのでしょう。
腕のある職人として生きていく。


でも、もう少し冷静に考えてみたらどうで
しょう。
こんな環境変化は、どの時代の人間もやっ
てきました。

子供たちが社会に出たときには、その時の
環境下、自分達でより良いものを見つけて
やっていくことでしょう。

そして、自分で考え、行動する人は成功す
るでしょう。
であれば、これまで通りではないか。


親世代の心配など、どうせ役に立たないの
だから、
私は、今の自分、今の持ち場で最善を尽く
していけば良いか、と少し開き直った気分
でおります。


今回は、最近の劇的な変化・動向から、将
来の日本でも起こるであろうことに思いを
馳せつつ、結局は、今この場で頑張ろう、
と思うに至った、というお話でした。


■まとめ
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AIによる雇用喪失は始まっているが、
これからも、考えて、行動する人は成功す
るだろう。

要はこれまで通り。
ノープロブレム。

■編集後記
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我が国にも初の女性の総理大臣が誕生しま
した。

男女の別で判断すること自体が良くないこ
となのかもしれませんが、トップが女性に
なったことで、日本も少し前に進み、少し
洗練された国になった気がします。

リーダー=けんかが強い人、みたいな原始
的な集団とは対極にあるような感じでしょ
うか。

かつて日本公認会計士協会の会長が女性だ
ったときもそんな気分がしたものですが、
今回は日本のトップの総理大臣。

とても良いと思っています。