第194回 すごい節税

  • レポート
  • 2021.08.31

今なら書けるかな、そう思うので書くこと
にします。

もう何年も前のある日、お客様の会社の経
理責任者からご相談が。

・社長が経営者仲間から「すごい節税」と
 いうものを紹介された。
・税理士監修のスキームで安心という触れ
 込み
・がぜんやる気を出して契約してきた。
・自分はNGだと思うけどどうでしょう?
 とのこと。

監修されているという税理士さんは、税理
士名簿に載っていて、ホームページもあり
ました。

経理責任者の手元には、その税理士さんの
手によるとされる、結構な量の関連資料が
あるのですが、書いていないことも総合す
るとこんな話でした。

・あるものの利用料を月に百万円単位で払
 う
・支払先は東南アジアのA国
・契約と同時に、なぜかA国とは無関係の
 B国に個人口座が開設されてカードが渡
 される。
・B国は、タックスヘイブンで有名な国
・会社がA国に利用料100を払うと、B国の
 個人口座のカードで70が自由に使えるよ
 うになる。
・カードは日本でも使えるが、なるべく海
 外で使えと言われている。
・70が使える理由は不明
 (借入なのか報酬なのか不明なのだがと
 にかく使える)

ダメでしょ。

ですよね。

でも、このスキームを企画した税理士さん
本人から説明を受け、大丈夫です、と言わ
れている社長は、経営者仲間もやっている
からやりたい。

私も、単なるネット情報ではなく、社長本
人が、実在する税理士から直接説明を受け
ているので、
「その先生はどうしてこれを大丈夫と言う
のだろう?」
と疑問に思いながら止める。
なので、どうも迫力に欠ける。

そんなことをやっているうちに一事業年度
が経過しました。

ただ、社長も思い直し、なんとかその一年
だけでストップすることに。

経理責任者としても、ストップしてくれた
のでまぁ良いかと一安心。

そんなことを忘れかけたちょうど3年後。
その会社に税務調査が入りました。

所轄税務署の事前予告ありの通常の調査で
す。

のように見えました。

最初は。

いつものように手順を踏んでは来るのです
が、何かちょっと変。

普段であれば最近の経営状況、社長のお話
をしっかり聞いた後に、では帳簿を拝見、
となるところ。
その時は、話もそこそこに帳簿を見せてく
ださい、と来ました。

そして、机上の直前3期分の帳簿。

普通なら調査官はまず直前期から見るので
すが、その時の調査官2人は、いきなり3
期前のファイルに手を伸ばしました。

あれ?

他の年度にも興味があるようには見せてい
ましたが、コピーする対象や質問もその期
に集中しています。

こちらもそれとなく聞くのですが、
それにはいつも通り「全体的に見せていた
だいています」とかわして帰って行きまし
た。

でも次の調査日だったでしょうか。
方針が決まったのか、
「お気づきのようですが、実は〇〇の件を
調べています。」
と来ました。

〇〇税理士が主導した案件、
それに乗った会社が50社までは行かない
がそのくらいの数あるので、一斉に調査に
入っているとのこと。

主導した〇〇税理士は、東海地方でつかま
えて話を聞いているらしい、ということも
わかりました。

そして、
争うのはかまわないが、
自社、関係会社、素直に修正申告して、重
加算税やらも含めて受け入れた方が身のた
めだ。
我々は他にも行くべき会社があるから、も
しそうするならこれ以上何も言わない。
と言われました。

実際はもっとオブラートに包んだ言い方で
す。
ただ、その場にいて通常の理解力があれば、
そういうことなんだな、と簡単に分かりま
した。

国税側も証拠固めの最中ですから、争えば
最終決定までには相応の時間が稼げたでし
ょう。

でも社長以下「すぐにそうします!」
と応じることに。

そしてその数か月後、〇〇税理士の名前は
税理士名簿から消えていました。

いまだに、なぜその先生がそこまで危ない
橋を渡ったのか不明です。

節税にミラクルはない。
あるように見えるものは脱税の可能性が高
い。

そんなお話でした。

■まとめ
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節税にミラクルはない。

あるように見えるものは脱税の可能性が高
い。

■編集後記
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先日(パラ本番の予行日)、ブルーインパ
ルスの飛行を見ました。

自宅が、編隊が南下してきて北西に進路を
変えるあたりにあるので。

少し曇り空でしたが、予告通りの時間にス
モークを引いた数機が飛行音を響かせなが
ら視界に入り、方向を変え、また見えなく
なりました。

それだけなのに、なんか感動しました。