第195回 改正電子帳簿保存法

  • レポート
  • 2021.09.30

IT化が遅れているとよく指摘される国の
お仕事。

とはいえ私の実感値では、国税庁はかなり
進んでいる方だと思います。

(1)様式をサイトでダウンロード
(2)パンフレットはWEB閲覧

他の省庁に先駆け、早くからタックスアン
サーをはじめとした国税庁のホームページ
が整備されてきた歴史があります。

(3)電子申告
所得税・法人税に始まり、かなり遅れてい
た相続税が令和1年10月から電子対応に
なりました。

当初は税務署の総務担当、時にはもっと偉
い人が会計事務所を回って電子申告のお願
いをしていました。
うちも何度か訪問を受けたことがあります。

そのおかげかどうかは別として、現在弊事
務所の電子申告率は99.8%。

国全体でも令和2年度の法人税は88.4%だ
ったそうです。
(令和3年度からは大法人が義務化された
のでさらに上がる見込み)

(4)リモート税務調査
国税庁が今年7月、中小法人の税務調査に
もリモートを導入するよう税務署に指示を
したとのこと。
(『税務通信』2021年9月13日号より)

そんな感じで着々と進んでいる税務行政で
の電子化対応。

そこで今回の本題、
(5)改正電子帳簿保存法
令和4年1月から始まります。

あえて取り上げたのは、少し特殊テーマで
ある(4)を除くと、上記(1)~(3)
とは異なり、全事業者への強制適用になる
からです。

これまでの電子化は、選択肢を増やし、利
便性を高める話でした。

それは、これまでの電子取引情報保存法も
同じで、
データで保存したい人は手を挙げて(申請
して)ください。
かなり要件が厳しいけど、それを満たせる
ならどうぞ、と。

しかし、今回の(5)は違います。
・申請不要。
・法人個人問わず、全事業者強制。

つまり、
「やりたいかどうかは知らん。」
「全員やることに決まった」
というもの。

注文書、契約書、送り状、領収書、見積書
等に通常記載される事項を電子的にやり取
りする「電子取引」は、「電子データで」
「検索可能等な状態で」保存が義務付けら
れます。

これまでのように、
・とりあえず印刷して保存してりゃ大丈夫
ではなくなります。

典型例としては、電子メール添付で受領し
た請求書PDFがありますね。
最近増えてきました。これも対象です。

じゃあどうすれば良いのか。
要件が決められています。

要約すると
(保存の要件)
・いつでも検索可能な状態で見られること。
 「メールソフト上で閲覧できるだけでは
 十分とは言えません」とされています。
・次のいずれかを導入していること。
(A)タイムスタンプした後授受するか、
  授受後速やかにタイムスタンプ
(B)訂正削除の記録が残る又は訂正削除
  できないシステムを利用
(C)訂正削除の防止に関する事務処理規
  程の備付け
です。

ただ、このためにオカネをかけて新システ
ムを導入するのはイヤ。

その通りだと思います。

そこで現実的な対応としては(C)の線で、
たとえば次のようにしてなんとかする。

(要件をかんたんに満たす例)
・一定ルールでフォルダ名・ファイル名を
 付ける。
・事務処理規程を整備する。

 具体的には
 例)20221031_㈱国税商事110,000.pdf
   (日付相手先_金額.pdf)
  などとルール決めして、
 「相手先」別 or 「月」別のフォルダに格納

 丁寧に事務処理規程のサンプルも国税庁が
 用意してくれていますから参考にして整備

(事務処理規程サンプル)
法人
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/word/0021006-031_d.docx

個人
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/word/0021006-031_e.docx

これらを準備して、来年から地道にデータ
保存をしていくことになります。

今回の改正は、会社経営者だけでなく、事
業所得がある個人の方も全て対象です。

あと3か月もすれば始まる話ですから準備
していきましょう。

参考
電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】
令和3年7月 国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_06.pdf

■まとめ
___________________

あと3か月!

改正電子帳簿保存法に備えましょう。

■編集後記
___________________

DAIGOさん(メンタリストじゃない方
)のような言い回しですが、最近DCB(
代表と茶飲み話)と称して、社員と時間を
取って個別にお話をするようにしました。

1人あたり15分程度。

これまでは、順番に飲食店でランチをして、
実は、、、
こうです、
悩んでます、
結婚します、
親の調子がイマイチです、
子どもが保育園でこうでした、
家を買おうと思うんですが、
〇〇はどうなったんですか、
△△しようと思うけれどもどう思いますか、
等々
聞いたりやり取りをしていました。

コロナでそれができなくなり、このままだ
と良くないな、と代わる機会を設けたとこ
ろです。

今のところ良い感じ。

基本、単なる雑談ですが、以前のようにそ
の人の近況やら、時に心配事などを聞くこ
とができます。

私も、無駄なことも含めて多くの経験をし
てきましたから、改めて税務相談のみなら
ず、投資相談等にも乗ると言っていますし、
お客様相手には普通にやっていることです
が、必要なら金融機関や弁護士も紹介しま
すよ、とも言っています。

もちろん無料で。

なお、本来オカネを取っているものを従業
員に無償で提供した場合、税務的には経済
的利益の供与として源泉徴収の問題が出て
くるのですが、本件は、下記に該当するの
で問題ないと判断しています。

所得税基本通達36-29
(課税しない経済的利益 用役の提供等)
使用者が役員若しくは使用人に対し自己の
営む事業に属する用役を無償若しくは通常
の対価の額に満たない対価で提供し、又は
役員若しくは使用人の福利厚生のための施
設の運営費等を負担することにより、当該
用役の提供を受け又は当該施設を利用した
役員又は使用人が受ける経済的利益につい
ては、当該経済的利益の額が著しく多額で
あると認められる場合又は役員だけを対象
として供与される場合を除き、課税しなく
て差し支えない。