第15回 中小企業に対する金融機関の態度の問題点

  • レポート
  • 2004.05.24

(融資の場面で)
個人事業の延長でごく小規模に始める場合を除き、設立間もない中小企業は、少しでも当初の目算が狂うとすぐに資金難に直面します。 外注さんを使いながら提案した案件が結局受注に至らなかった。 大型案件を受注できたのは良いが、入金までの時間が長く、それまでに給与や外注費の支払が回ってくるので、2~3ヶ月、資金ショートが生じてしまう。 ビジネスの性質上、売上が立つまでにどうしても数ヶ月以上かかってしまう。 等々、事情は様々です。 しかし、このような場合に融資を受けるのは残念ながら容易なことではありません。 政府主導の様々な施策が徐々に浸透してきて、金融機関も中小企業融資に注力してきたので、事態は若干好転しています。 しかし、その条件は厳しく、代表者の個人保証は当然とされ、それに以外の保証人ないしは担保が当然のように求められます。 開業後3年以上経過していれば、中小企業向けに都市銀行も若干金利が高めではありながら融資には応じつつあるようですが、開業直後は対象外とされてしまいます。 国民生活金融公庫も事情はあまり変わりません。 事業計画等の提出を求めるものの、実際にはあまりそれを見ずに、担保か保証の方ばかり目がいってしまうようです。 (逆に言うと、担保か保証があれば500万円程度なら結局は貸してもらえる、ということになるのですが) 金融機関も淘汰の時代ですから、つぶれるかもしれない企業に貸せない、というのも理解できますが、オカネは別に要らない、といっている好調な中小企業には必要以上にオカネを貸してわずかな金利を取った上に、それで定期積金をやらせたりしています。

(資本金の保管証明の場面で)
さらにいえば、設立をしたい、という起業家の資本金の保管証明すら積極的に避ける始末です。 私共でも設立からお手伝いさせていただくことが多いので、お客様には、 「資本金の保管証明は、個人のときから口座があって、お付き合いしている銀行にお願いしましょう」とアドバイスします。 単に開業予定の場所と近いから、とかの理由で窓口にいっても、門前払いされることは間違いないからです。 ただ、個人として口座を持っていた場合ですら、のらりくらりとかわされて、さらには「今なら確認会社で設立すれば良いんじゃないですか」という始末です。 以前もひどかったですが、今はこうした逃げ口上ができて、悪化してきました。 確かに現在は最低資本規制の特例があって、経済産業局の承認があれば設立できるわけですが、それは最低資本金に足りない会社の場合に限っての話です。 既に1000万円をなんとか用意した人にこの制度を使わせて、自分のところではかかわらない、というのはいかがなものでしょうか。 結果的に、このお客様の場合は、なんと995万円の資本金で確認株式会社としてスタートしたわけですが、国から湯水のように資金供給を受けながら、起業を促進する国策とまったく反対のことをやっている金融機関の態度に憤りを超えてあきれてしまいました。

金融機関に対しては、適正な金利をとるのは決しておかしいことではないので、当初から切り捨てたり、わかりにくい会社とは当初からかかわらない、という態度はぜひ改めてもらいたいと考える次第です。 貸す会社には1%台の金利で貸して、そうでない会社には一切貸さない、という状況は徐々に改善されてはきましたが、こんなのは商売とはいえないし、商売でないのなら社会的要請に応えているかといえばそうでもないし、存在意義が疑われる状況が続いているように思います。