第25回 平成19年税制改正について

  • レポート
  • 2006.12.31

平成18年は大きな税制改正が多く行われた年でした。
1)特殊支配同族会社の損金不算入、
2)留保金課税の課税対象の拡大、
3)役員給与関係の取扱の厳格化。

特に、1)は、簡単にいうと社長の給与が上場企業の課長並みで利益がちょっと出ている、という程度以上のオーナー会社に対して、これまでにない大きな課税をもたらしたもので、その影響は来年3月決算の会社から発生します。

50万円程度以上の税額が簡単に増えるもので、理論的背景は納得できるものではあるものの(給与所得控除部分を個人事業者同様に認めないとするもの)、これまでなかったものが発生することになったため、該当しそうな各社はオーナー親族以外の役員を増やそうとしたり、これを機に社外に株式を持ってもらったり、という対応を検討しているところです。
(但し、このために株式を社外に出すことは対策としてはグレーであると言われています)

また、2)は、1)よりもさらに儲かっているような会社が対象になるもので、これまで設立10年以内なら課税しない、といった措置が外れて、対象となる会社がかなり増えることとなりました。

それから3)は定期同額、事前確定、利益連動、といった損金になる役員給与の条件を定めたものでしたが、事前確定の届出が文言通りだと総会当日しか提出できない、といった問題点が指摘されていたところです。

こうした状況に対して、平成19年の税制改正が自民党で固まりつつあり、その要旨は次の通りとされています。

1)特殊支配同族会社の損金不算入は、対象外となる会社が増えそうです。  簡単にいうと、社長の給与が上場企業の部長・役員クラス以上で利益がちょっと出ている、という程度以上のオーナー会社からが対象となりそうです。(厳密には基準所得金額が800万以上だったものが1,600万以上になる、という表現になります)

2)留保金課税の課税対象外となる会社も減りそうです。  資本金1億円以下は対象外になりそうです。

3)事前確定役員給与の届出期限が1ヶ月先延ばしになりそうです。  総会+1ヶ月以内、という取扱になりそうで、上記に掲げた弊害がクリアされました。

4)その他  新聞でもこれだけはよく取り上げられていますが、固定資産をほぼ全額減価償却できることになりそうです。

基本的に19年4月1日以降開始の事業年度から適用開始、という予定になっていますので、18年税制改正で決まった厳しい基準は1回は適用される、ということになります。 また、まだこれは党税調での案段階なので、例年同様、来年3月に向けて詳細が変更されていくことになります。

ただ、いずれにしても、基本的に企業にとっては税額減の方向性として歓迎すべき改正だと思います。 とはいえ、税額を確保するためになんとか平成18年で導入・強化した1)2)のような制度を骨抜きにして企業を優遇し、一方で個人の負担(税・社会保険とも)はどんどん高め、国の借金解消は景気任せ、という方向性は国としてはどうなのだろう?と個人的には心配に思うところです。