第29回 夢のような節税について

  • レポート
  • 2007.08.06

表題の件、まずは「基本的にそのようなものはありません」という結論からスタートしたいと思います。

利益が出そうだ=税金が結構発生しそうだ、というと、どの会社さんでも「節税」がテーマになります。  節税は脱税ではないので自ずと限度がありますが、社長の中には、世の中には自分の知らない夢のような節税法があるのではないか?知らないのは自分だけではないか?と不安に思われる方もいらっしゃいます。 しかし、基本的にそのようなものはありませんので、ご安心いただいて大丈夫です。

税法の隙間、国内と海外の隙間を利用しようとしても、そうした隙はがあってもすぐに塞がれますし、微妙な隙をついて後日調査を受けてひっくり返されたり、それに納得いかないからと裁判になっても、税務当局にはなかなか勝てません。その場合、本来の税金はもちろん、加算税・延滞税がかかりますから、微妙なものを無理矢理採用することはあまり賢明な対応とはいえません。なお、見つかりにくいかどうかを判断基準にすると別の世界に行ってしまいますから、やはり、明確なルールを抑え、その中でいかに節税するか、というのが結局は正しい判断なのだと思います。

このためには、地道な経費計上と、決算対応としては、(決算前に役員報酬を上げても税務上は一切費用になりませんから、)
①従業員にボーナスを出す
②費用になるもの(30万円未満のもの)を購入する
③倒産防止共済に入る。
④節税用に設計された民間の生命保険に入る
⑤その他その会社・業界固有の対応
といったことを行うのが一般的かと思います。
かなり常識的な対応ですが、これだけでもやりようによっては百万、千万単位で動かせるので馬鹿にできません。
①は、従業員への投資が費用にもなるし最も有益な投資である、という観点からは最良の手段なのかもしれません。
②は、現在、30万円未満を即時損金にできるのは300万円が限度なのですが、どうせ予定あるのなら今買ってしまうのが良い、というものです。
③は、少し前まで国がやっていた、現在は独立行政法人が運営するものです。本来の目的は連鎖倒産防のため、取引先の倒産に対して直ちに融資をしてもらえる、というものです。 しかし、これには副次的なメリットがあり、それを主目的に入る会社さんがあります。  どのようなメリットかと言うと、一定期間してから解約すると100%戻ってくるのに、掛金が全額損金になるというものです。(ちょうど、費用に計上しながら貯金するような状態になります)ただ、年当たり掛金の上限は96万であるため、これも限界があります。
④は、千万円単位で加入される会社さんもありますが、民間の生保会社で年払いで高額の保険に将来解約する前提で加入する方法です。③のように掛金が全額戻ってくることはありませんが、それに近いものがあり、大きなオカネをきれいに、かつ、直ちに動かして税金を減らすことができる点で良く利用されます。(但し、保険料を払う現金がないといけません。)  また、現在、良く使われる節税目的の保険種類のうち、逓増定期保険というものには税務当局の規制の手が伸  びてきている状況で、生保業界でも対応に苦慮しているようです。  (実際少し前から、どこの保険会社も逓増定期を節税用に販売するのを自粛し始めています)

③、④は、確かに当期の税金を減らす点で意味があるのですが、将来解約時に利益として返ってきます。 そのときに経営状況が悪ければ問題ないのですが(という言い方も変ですが。。。)、現在同様利益が出ていればそこで税金がかかります。 (解約のときに、社長や親族である取締役が退職して、退職金として費用化すれば、会社にはプラスマイナスゼロとなって、かつ、退職金の税率は現在低いのでOK,、という対応の仕方は確かにあって、保険会社はそれを勧めています。ただ、この「退職金の税率が低い」という税制が、いつまで続くかは分からないという懸念が残ります)

つまり、これらは税金を減らすのではなく、先送りしているだけ、という言い方もできます。 ただ、だから意味がないか、というとそうではありません。 時間を稼げた、という点は十分に意味があるからです。 たとえば、期末に役員ボーナスを出したかったけど損金にならないからやめた、というケース。 時間的猶予があれば、来期以降の毎月の役員報酬を高くして費用にしていくことが可能です。

なお、⑤は業界・会社固有の対応となり、一概には言えません。

あれこれ書きましたが、一方で付け加えたいことは、節税は確かに大切ですが、それに気を取られて正常な判断を失わないことも重要、ということです。

世の中には色々な人・会社がいて、近づいてきます。 たとえば、節税ニーズに対応するため、と称して、単純に損するだけのネタを持って現れる業者もいます。 損をすれば利益が減りますから税金も当然減るのですが、一見分からないようになっています。

たとえばこういうことがありました。簡単に言うと、「車を売るので買ってください。数ヵ月後に安く買い取ります」という業者にアプローチを受けた会社さん。  あやうく社長はこれを受けそうになりましたが、「要は損するということですか?」と確認したら、気づかれて思いとどまりました。簡単にこう書くと馬鹿みたいに思われるかもしれませんが、あれこれ関係ない説明とともに紹介されていたため、乗り気になった社長をあながち責められない感がありました。税金を払った後に残るはずのものまであやうくなくすところだったわけです。

こうしたことがないよう、私共は、お客様の税負担が最小になることを当然の目的として認識しつつ、一方で、むやみに無理な税金減らしに時間と労力とコストを傾けて、会社の成長を止めたり、かえって損をしてしまうようなことのないよう、ご支援できるよう心がけています。