第54回 税務署と監査法人

  • レポート
  • 2009.12.28

今回はビジネスでお付き合いを避けることができない税務署。
そして、その先で会社を上場させようとするとお付き合いすることとなる監査法人の話です。

税務署はご存知でしょうが、監査法人はあまりご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。

監査法人は、上場企業やその準備中の企業が作る決算書にお墨付きを与える仕事をしています。株主や投資家の代わりにチェックして、「この決算書は問題ないですよ」と意見表明します。

監査法人は公認会計士だけが社員になれるので、私にとってはまぁ同業者みたいなものなわけです。
(実際、会計士試験に一緒に受かった仲間の多くは独立したり民間企業に移ったりしていますが、今でも監査法人に少なからずいます。)

ちなみに、税務署は会社に対して「極力利益が出るように」、監査法人は「極力利益が出ないように」と、正反対に誘導する形でチェックしてきます。
税務署は利益から税金を取るのが仕事、監査法人は不確実な利益から投資家を守るのが仕事なので当然と言えば当然です。

つまり、個人事業者や多くの中小企業は税務署だけですが、上場を目指す会社等は監査法人からもチェックを受けるわけです。

私共のお客様にもそうした、監査法人の監査を受ける会社が何社かあります。
そのため、私共も税務署対応、監査法人対応を直接・間接に行います。

では、どちらの対応がしやすいでしょうか?
ちなみに、税務署は国家機関、監査法人は民間団体です。
税務署はお上のお役人、監査法人には友達までいたりします。

では監査法人か?
いいえ。私が思うに(意外に思われるかもしれませんが、)税務署です。

そして、その理由も意外に思われるかもしれませんが、
税務署は雰囲気で処分を決めたり、根拠のないことを押し付けることはないからです。

つまり、根拠が希薄な点を突けば、争ってこちらの意見を通せることもあります。
実際、先日立ち会った税務調査でもそうしたことがありました。

では逆に、監査法人は根拠のないことを押し付けてくるのか?
少し言いすぎかもしれませんが○です。

雰囲気で出した判断を押し付けてくることがあります。
会計基準通りの処理であっても認めないことも少なくありません。
そして、それを会社が主張してもほとんど通りません。

なぜなのか?

彼らは会社に対して意見を表明しない自由を持っているからです。
「嫌なら仕方がないですね。ただ、それだとうちは御社の決算書が正しいという意見を出せませんよ。」ということになります。

監査法人の適正意見がない決算書は信用されないため、会社も困るわけです。
(なお、会社も監査法人を変える自由は持っています。
しかし、本当に変えると会社側に問題があると思われるためにめったに
できません。)

そのため、(以前はそうでもなかったのですが)監査法人は会社に対して相対的に強い立場にあります。
先日も、会計基準通りの処理なのに、監査法人が世間の空気を読みながら下す判断にお客様である会社側が振り回されることがありました。

大手監査法人の意見なので、残念ながら上場準備企業にとっては基本的には言われるがままです。

今回はビジネスの世界でお付き合いすることとなる典型的なプレイヤーをご紹介しました。

なお、監査法人と直接お付き合いすることになる方はビジネスの世界では多くないと思います。
逆に、税務署は避けることができませんが、上記の通り比較的クリアにルール通りに運用されていますから、むやみに恐れる必要はありません。
一定レベルを理解し、それを超える部分は私共のような専門家にお任せいただければ問題ないわけです。

最後は営業トークのようになってしまいましたが、ご安心ください。

***************************あとがき********************************

監査法人を悪く書きすぎたかもしれません。
お客様である会社側に立っていると頭に来ることがあり、このような書き方になってしまいました。
ごめんなさい。
ここで書いた悪口のような話は彼らのほんの一部で、基本はまじめに社会的使命に応えるべく力を尽くしている優秀な人達です。
以上フォローしておきます。