第83回 以和為貴

  • レポート
  • 2012.05.31

和を以って貴しと為す。

さすが聖徳太子は良いことを言います。
忘れたくない日本の誇りですね。

争いは心理的だけでなく、経済的にもかなりの不利益をもたらします。

経済的成功者に夫婦円満の人が多いという統計がありますが、これは単に共働きで商売しているから、というのではなく、離婚やその前後の高いコストを負担しないからだそうです。

これはビジネスの世界も同じ。
日頃お客様を見ていても本当にそう思います。

裁判沙汰になると、弁護士さんを頼んで、長い時間と高いコストをかけて、マイナスの大小を決めることになります。

勝とうが負けようが後ろ向きのことに時間を取られ、心理的にも穏やかでない消耗著しい事態を招きます。

さらには、そこで明らかになる表のコストだけでなく、悪評を撒かれて嫌がらせをされて現状のビジネスに支障が出ることも珍しくありません。

争いは良いことがない。
つまり、円満にできそうにないなら、争いにならないように、相手を怒らせないようにお別れすることが望ましいわけです。

残念ながら、私共もごく稀ながらお付き合いしたくないお客様と出会うことがあります。
会計事務所はありがたいことに、基本的にお客様には大事にしていただいているのですが、中にはあれこれ無茶な要求をしながら職員を怒鳴りつけたりする方もいらっしゃいます。

そういう場合はなぜかカネ払いも悪いことも多く、良いことがないわけです。

じゃあ切れば良いじゃないか。
そのとおり。

でも「あんたはひどい人間だからお断りだ」などと言ったら一時的にスッキリするかもしれませんが角が立ちます。
無用な恨みを買って、さらに難癖をつけられる可能性が高い。

そこでその代わりに私はこうします。
腹に据えかねることも抑えてです。

「ご期待に沿うことができず、大変申し訳ありません。
ひとえに私共の力不足で、このままお任せいただくと、さらにご迷惑をおかけしてがっかりさせてしまうと思います。
ついてはせっかくご縁をいただいたのにこんな形となり誠に残念なのですが、今後は他の事務所にお任せいただいた方が、貴社のためにも良いように思いますがいかがでしょうか。」

こうすると、結果は同じ契約解除でも、相手に「使えない事務所だからこっちから切ってやったよ。」と感じてもらえることになります。
そんな使えない相手をさらに追い込んでやろうとはなかなか思わないようで、その後さらに揉めたりすることはありません。

切るのではなく切らせる、というか、切っていただく。
うまくいったとしても決して気分の良い話ではないのですが、ご参考まで。

*********************** まとめ *****************************

和を以って貴しと為す。

*********************** あとがき ***************************

日経新聞の今月の「私の履歴書」は桂三枝師匠でした。
父親の戦死で母子家庭で育った大変さもそうですが、一線で活躍する人はやはり行動するのだな、と深く感じました。

関西大学の落研では、関西だけでなく関東の大学も交えて大規模な寄席をやろうと思いついた。
メールはもちろんない。
電話も学生同士が自由に使うものではなかったので手紙でやりとりしながら実現した。
弟子入りしてから、ラジオやテレビに出ることになってからもそんな話がいくつもありました。

師匠と呼ばれる年になると、上方落語協会の社団法人化、常設寄席の設置、カネの工面にひやひやしながら先月とうとう協会会館を完成させたりと活躍されています。

テレビで「いらっしゃーい」、「およよ」と見るのはほんの一部。

リスクを恐れないというか、感じながらも前に進む。
格好良いですね。
見習いたいと思いました。