第171回 裏切者?

  • レポート
  • 2019.09.30

 

どんな組織にも裏切者がいます。

裏切者は悪い意味で使われますが、それと
対立する勢力にとっては敵の情報を提供し
てくれるありがたい存在です。

今回は税務署にとっての裏切者。
私達会計事務所にとってはありがたい存在
の話。

彼らは、国税出身者と一言で整理される人
達の中でも異色の存在です。

前職での経験やそれを深堀りした研究成果
を元に、税務署との対決のしかたをわれわ
れ会計事務所にセミナーを開いて積極的に
情報提供したり、教材を出したり、コンサ
ルをしたりして指南しています。

私達もその先生方が著す資料を、(時にそ
れは数ページのPDFデータ1本だったり
しますが、)何万も出して買ったりして参
考にしています。

その中に、税務職員録の見方というものが
ありました。

国税局ごとに税務職員の配属は公表されて
おり、それを過去10年にわたってまとめ
た書籍が市販されています。

10年職歴と言って、6千円くらいで誰で
も買えるのですが、それをどう読むかとい
う内容です。

私達は税務調査の立会の前、相手の調査官
がどんな人かを検討するのですが、10年
職歴はその時に用います。

簡単に見るだけでも、
酒税ばかりやっていた調査官が今年から法
人税の調査に配属された。
その調査官が1人で来る。
たいしたことはなさそうだ。

逆に、
国税局でバリバリやっていた調査官が複数
名で来る。
手ごわそうだ。
とかわかるわけです。

それをさらにその先生がディープな分析を
して、
いつ任官してどの部門を渡り歩いてきたら
どうとかこうとか書かれています。

では、この記述は正しいのか?
判別つきにくいところですが、正しかった
です!

なぜそう言えるか。

この資料には、全国に5万人以上いる国税
庁職員の中から、サンプルとして4人だけ
実名で、「この人はこんな調査官と推察で
きる」と具体例が出ていました。

そして私は、極めて偶然ながらその4人の
中の1人の調査に、これを買う少し前に立
ち会っていたからです。

その上席調査官。
動きに無駄が多い。
いったん指摘したものをすぐ取り下げたり、
余計なことをするなぁと思ったら、それに
対して社長も私も求めていないのに上司を
連れて謝りに来ようとしたり。

落としどころを見つけるのを手伝おうとし
てもかみ合いません。

最後の方で出してきた指摘事項は結局、こ
ちらがたいした反論もしていないのになか
ったことになって会社としては無傷でした。

無傷で良かったけど、自分の手柄というか、
あっち(調査官)の能力に問題があったな、
と思っていた事案です。

その後に読んだこの資料に、この調査官が
なんと実名で論評されていました。

その記述
「この国税調査官、過去9年で異動は署だ
け局以上に行っていないことが分かります。
仕事内容を大きく確認しますと、内部部門
である法人1部門(平成○事務年度)を除
き、基本的に番号が後半、すなわち一般調
査を担当するナンバー部門の者であったと
判断できます。
このように、局以上に異動せず署のナンバ
ー部門だけを移動している上席調査官は原
則として税務調査能力に疑問符がつく職員
です。
(中略)
つまり、部門数が大きくないところでは主
力となりうる反面、そうでないところでは
主力足りえないのがこの上席調査官であり、
結果として税務調査能力はそれほど大きく
ないのではないか、という結論が下される
わけです。」

 

お役人とはいえ個人名を出していますから
問題があるのかもしれません。
現在販売されていないようです。

なお、オフィシャルには下のようなものが
出ていますので、これでも多少は参考にな
りますが、当然あまり深い話は出ていませ
ん。
http://www.zeikei-news.co.jp/pdf/h29_10reki.pdf

 

今回は、裏切者からの情報提供を受けて仕
事に使っている、私達会計事務所のお話で
した。

■まとめ
___________________

・国税の裏切者はこっちの味方
・10年職歴というものがあって、
税務調査の前にどんな相手かを知ること
ができる。

■編集後記
___________________

実は本文とは別の税務調査で、件の資料が
話題になりました。

その時は国税局資料調査課で主査(※)を
していた女性の******官が所轄を率
いてやってきていた調査で、いわばエース
級の人達。

この資料の執筆者のM先生というのは国税
の中でも有名だそうで、自分たちについて
どんなことを書いているのか興味があると
のこと。

PCの画面で少し見せたところ、食い入る
ように見て、あぁでもないこうでもない、
と言っていました。

 

(※)資料調査課(リョウチョウ)の主査
というのは、所轄を含めて20人を超える
こともある調査現場のリーダーですから、
極めて高い能力を持ちます。

 

******官は、少し特殊な役職で、個
人を特定してしまう可能性があるため伏せ
ました。