第224回 誤算

  • レポート
  • 2024.02.29

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手持ちの不動産の一部を手放すことにしま
した。

12年前、お客様(不動産業)にご紹介い
ただいて、同時に取得したワンルームマン
ション2部屋です。

ちなみにこのお客様は、アメリカの大学で
物理学を教えたり、テレビで不動産業界事
情をコメントされたり、と多才な方で、こ
の業界にありがちなギラギラ感とは無縁の
方。
それもあって私を含む周囲からの信頼も絶
大です。

なおこの2部屋は、別々のマンションの各
1室なのですが、いずれも渋谷区にあって、
当時いただいたお話では、
ポイントは
・古い
・狭い
・その分家賃が安い
・そして超駅近
なので「空き知らず」
とのことでした。

実際その通りで、保有していた12年間を
通して、トータルで3か月も空いた期間は
なかったと思います。
(この視点は皆様の不動産投資の参考にな
るかもしれません)

持っていても良かったのですが、今回それ
よりも大きめの物件を取得するにあたって
手放すことにしました。

ただ、実はそれがなくてもいずれは手放そ
うとは思っていました。

なぜか?
それは相続財産にマンションがあった場合、
その評価がけっこう面倒だからです。

マンションの相続税評価をどうするかご存
じでしょうか?
実は一軒家と同じかそれ以上に手間がかか
ります。

土地と建物に分けてそれぞれ評価し、それ
らを合計するのですが、

【土地部分】
1部屋だけ所有している場合でも、マンシ
ョンの敷地全体を評価します。

それには、登記簿謄本、公図、実測図、路
線価図、固定資産税評価証明、住宅地図、
航空写真といったものを用い、さらに必要
に応じて現地確認をします。

「路線価」というワードをお聞きになった
ことがあると思いますが、田舎を除くと全
国の道路には1平米当たり〇千円と値段が
ついています。

今ではネットで確認できて、
たとえばこれを見ると
https://www.rosenka.nta.go.jp/main_r05/tokyo/tokyo/prices/html/18008f.htm
左下の方、
路線価日本一で有名な銀座5丁目の鳩居堂
前道路には42,720とあります。

これは、この道路に面した土地は、1平米
当たり42,720千円(=4,272万円)で評価す
ることを意味しています。

このようにしてマンションの敷地が〇千円/
平米の道路にどのように接しているかを特
定。

真四角で正面にだけ道路が接していれば簡
単ですが、
横や裏でも道路に接している、
角地だ、
きれいな四角形でない、
奥行きが間口に比べて長い・短い、
セットバック要件がある、
敷地に私道部分が入っている、
といった諸要素を反映して増減させなけれ
ばなりません。

その結果に所有権割合を乗じて評価額を出
します。

【建物部分】
土地よりは簡単で、基本は固定資産税評価
額です。
ただし最近の税制改正でマンション独自の
評価要素が導入され、一軒家以上に面倒に
なりました。

つまり、いつになるかわからないけれども、
私が将来こうした小さな物件をいくつも抱
えて死んだら、私の遺族はうちの事務所に
依頼するだろうから、その人達の手を余分
に煩わせてしまう。

であるなら、小さなものはなるべく集約し
ていった方が良い。

そんなことを真面目に考え、いずれはと考
えていたものを今回良い機会だと考え実行
することにしたわけです。

そこで、管理もお任せしている上記お客様
に売却を依頼。
相場からめやすも出していただき、
「買った時よりも4割近く上がっているよ
 うですよ」
「それは良かったです」
などとやり取りをしていました。

その後半月ほどしてご連絡がありました。

「先生ご存じのA様が、ご購入の意思がお
ありとのことですがいかがですか?」
とのことでした。

すぐに決めていただいてありがたい。
Aさんは存じ上げていますし、全く問題あ
りません。

ただ1点誤算が。

こちらのAさん。
かつてそのお客様にご紹介いただいた、う
ちの事務所のお客様なのです。

80歳を過ぎ、時折相続のご相談もいただ
いています。
私よりも30歳くらい年上。
ということは、、、

「誤算」というほどたいした話でもないで
すが、
いつか自分の死後に、事務所の誰かがやる
はずだったマンションの相続税評価作業。

手放すつもりが戻ってきただけでなく、単
純計算で30年も早く、自らやることにな
りそうです。

ちなみに土地の相続税評価は、実勢価格の
約8割とされています。
(=上記「路線価」が、実勢価格の約8割
で決まっているため)

なので、Aさんに限らず、相続税対策とし
て不動産を買うのはアリです。

そのため世間では、不動産そのものだけで
なく、それを小口化した商品まで、評価減
に加えて一口が手頃で分割しやすいという
理由で相続税対策目的でよく売れているよ
うです。

■まとめ
___________________

・古い・狭い・家賃安・超駅近は、空き知
 らず

・不動産の相続税評価は面倒
 そう思って、手放したはずの作業が戻っ
 てきそう。

・不動産は相続税対策に有利

■編集後記
___________________

本稿にも関連しますが、不動産価格は右肩
上がり。
日経平均は史上最高値を更新しました。

これには
・モノの値段が上がっている
・カネ(特に日本円)の価値が下がってい
 る
の二通りの考え方があると思いますが、
どちらかと言ったら現在は後者と考えるべ
きではないか。
投資好きのお客様とこのようなお話になる
ことがあります。

貨幣の基本的機能の1つである、価値保存
機能が不完全とも言える状況。

であるなら貯金ではなく投資をすべき、と
いうことになります。

なにも投資先は株や不動産である必要はあ
りません。

以前お伝えしたように「投資先=自分自身
」はベストな選択の1つですが、それでな
くても良い。

とにかく、オカネそのものをため込むので
はなく、それをオカネや価値を生み出す本
体に投じるべきであるということかと思い
ます。

でもよく考えてみればこれは、どんな時期
・時代にも当てはまる当然の話、真実なの
かもしれません。