第89回 成功と憂鬱

  • レポート
  • 2012.11.30

お客様で私と同い年(42歳)の社長は、ほぼ完全にリタイアされています。

他人に任せたビジネスや不動産から一定の収入があるので、働く必要がない。
熱中するご趣味もあるので日々楽しくやっているように見えます。

多くの人が成功者像として目指すポジションといえるでしょう。
では当のご本人はどう思っているか。

先日ポツリと、自分はここを目指してきたのではなく、限界を感じて立ち止まっただけなんです、という趣旨のことをおっしゃっていました。
本当は自分はビジネスの世界でさらに活躍できると思っていたけど、そうでもなかった、とのこと。

傍から見ると成功者なのに、ご本人の認識がまったく違っていて、なにか不思議な感じでした。

ただ、この社長に限らず、経営者の方々とお付き合いしていて思うことですが、40代前半は、よく言えば自分を見直す、悪い意味で言うと見切りをつける、ということを自然にやってしまうので、気をつけた方が良さそうです。

世に言う厄年と割り切ればそれまでですが、
とてもアグレッシブだった社長が急に立ち止まったようになり、
「なぜあんなに自分は頑張っていたのかな」と言ってみたりします。

寝付けない、もしくは朝の寝起きが極端に憂鬱になる。
傍から見ていると順調なのに、これまで以上に不安になってみたり、涙もろくなってみたりする。

1年後には
「なぜあんな気分だったのかな」とおっしゃることも多いので、一時的な現象なのでしょうが、気をつけたいところです。

でも、どう気をつけるか?
思いつく参考になる本を紹介します。
『成功の実現』(中村天風著)

少し高価な本ですが、著者の中村天風さんは東郷平八郎元帥や京セラ創業者の稲森和夫氏も師事した大先生です。

読んでいると、洋の東西、別々のルートで研究しても、世に言う成功哲学の結論は同じになるのだな、ということが分かるのですが、この中には気の持ちようも書かれています。
たとえば

・寝るときには、思えば思うほど楽しく、考えれば考えるほどうれしいことだけを思ったり、考えたりして寝るようにすべし。
・人間は心も体も生きるための道具。一番尊いのは霊魂である。
・自分というものは肉体や心の奴隷でもなく従者でもない。したがって、肉体や心に使われるべきではない。どんな場合でも、心を立派に使いこなしていかなければならない。

要は、調子が悪い体も、くよくよする心も、道具の一部に支障が出ているにすぎない。
自分そのものではなく、道具の故障であるから、なおす努力はすべきだけど、ことさら気にしてさらに悪化させるようなことはおかしいよ。ということです。

心も道具である、ということに天風さんは気づいたそうですが、なるほど。
自分を客観視することの大切さと言いましょうか。

*********************** まとめ *****************************

体も心も、道具と割り切ってみる。

*********************** あとがき ***************************

本稿とも関連しますが、先日、同じお客様に一緒に関与していた弁護士さんが亡くなりました。やはり同い年の42歳で。

少し難しい案件を抱えていたということですが、直接の死因は心臓の疾患だったそうです。
4歳のお子さんを残し、言葉もありません。
ご冥福をお祈りします。

体も心も健康が第一ですね。